人間喜劇
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 福知山線事故に関するブログのエントリーで目にするのは、JR西日本の批判よりもメディアに対する批判の方が多いような気がしている。

 批判されるべき対象がマスメディアで一切批判されないという状況では、個別メディアとしてのブログがその批判対象を批判する声が大きくなるのは当然だろう。僕自身、JR西日本よりも報道陣に対しての怒りの方が強い。マスメディアの福知山線報道に触れるにつけ、不愉快さは増していく。

 何に対して不快に感じるのかという視点を整理してくれるブログのエントリーがこちら。

愛欲の解毒場:JR西日本脱線事故の報道

 これを見ながら感じたのは、報道が悪役を仕立て上げているということだ。

●運転士
●車掌
●被害者
●被害者家族
●社員のボウリング大会など
●事故車両の客車に乗っていた運転士
●テレビに見るレポーター
●報じたことへの責任



●運転士
 事故直後にクローズアップされたのは、事故車両を運転していた運転士。過剰なスピードでの運転という過失からは逃れられないし、責任の一端は確かに担わねばならない人物だ。

 しかし、彼のプロフィールは必要だったのだろうか。結局故人となって現場から運び出されるわけだが、それ以前から彼のプロフィールは公に報道されていた。事故の原因をつくった人間だとしても、生死のわからぬ人間に対して一定の礼を守らぬ報道には不快感がつきまとう。

 また、社内での経歴などが明らかになるのは肯けるのだが、なぜに性格や人となりが必要だったのだろうか。報道では、彼の経歴や性格を前提に、事故原因を推測していた。しかし、そんな心理的側面を前提にして説をたてても、はじき出した答えはあやふやなものばかりになる筈だ。

 結局は運転士をダシにしてJR西日本という悪役を作り出そうとしたにすぎず、死者に対しての非礼は行き過ぎたものと感じられる。



●車掌
 報道は、現在警察で供述をする車掌の家族にまでインタビューを行っていた。

 もちろん今回の事故と社員の家族とに関連は全くない。今回の件で、社員の家族は心を痛めているだろう。全く関係のしようもなかったことに責任を感じる方もいるかもしれない。そうした方々の声をうかがうことで何をえようというのか。

 社員に代わり謝らせて注目を浴びようとしたのだろうか。ここでもその倫理のなさに閉口する。こうした報道はこれまでも繰り返されたものだが、いい加減に自粛したらどうなのか。そうした報に接する立場としても複雑でやりきれない気分になる。

 仮に、こうした立場の方がいることを世に知らせるというメディアの役割に注目するとしても、事故後間もないこの段階でインタビューを決行することには肯けない。時間が経つのを待ってからというのが倫理というものではないだろうか。



●被害者
 事故の様子を知りたいと思うのは第三者にとって当然のことと思う。そうした欲求に答えて、多くの被害者にインタビューがなされ、事故当時の生々しい様子がうかがえる。この点では報道の役割は果たされており、僕はそれを感謝している。

 だが、報道に登場する被害者の多さに疑問を感じる。一つのテレビ番組で3,4人の被害者が登場するのを目にする。テレビ局は全国ネットの他にも地元のテレビ局があろう。メディアは新聞、雑誌、ラジオとある。これらにそれぞれ所属する記者達が、被害者の声を報道してくれるわけだが、その数はいかほどに及ぼうか。複数のメディアから同じ質問を投げかけられる事態が頻出していることが予想される。

 被害者の中には、そっとしておいてほしいと思う方もいるだろう。報道する側がこれだけの多数にのぼれば、人の気持ちに土足で踏み込むような態度の人間がいても不思議はあるまい。そうした事態があったうえでの、メディアに登場する被害者ではないのかと僕は想像する。こう考えると、一定の協定があってしかるべきではないかと思う。



●被害者家族
 怒りを露わにする家族を多く目にする。彼らは顔を隠されない。

 一般人の顔をこんなに簡単にマスメディアにのせてよいのだろうか。もちろん事前に了解はとっているのだろうが、事故直後の現段階で、冷静でいられないご家族も多かろうと思う。そこを冷静に報道することこそがメディアの倫理じゃないだろうか。

 また、JR西日本への怒りの声ばかりを見かけるが、報道への怒りの声などはないのだろうか。悲しみの様子だとか、怒りをおさえた様子だとか、そういう風景は見かけない気がする。インパクトがあるものを選んで報道されているように感じる。そこには悪役をつくり、よりインパクトある報道で自社媒体に注目を浴びようとする姿勢を感じる。



●社員のボウリング大会など
 事故後1週間して槍玉にあがった、ボウリング大会。基本的に非はJR西日本の社員にあるわけだが、その取り上げ方の凄まじさ。そんなに重要なニュースなのだろうか。

 視聴者・読者のJR西日本へのマイナスイメージを扇動しているだけのように感じられる。重要なのは、事故によりどういった被害があり、どういった原因があり、どうすれば改善できるのかという点。社員の動向などがトップニュースで扱われる必要はない。



●事故車両の客車に乗っていた運転士
 結局職場に向かった運転士たちだが、事故当時の管理者との会話が公開されている。

 テレビでは、この会話の様子を、感情込めて再現するVTRが目立った。これなどは悪意以外の何者も感じない。管理者が人命をちっとも気にしない無機質人間であるという演出を行っているとしか思えない。すべてはJR西日本という悪役企業を仕立て上げるためである。

 前回のエントリーで述べたとおり、批判対象を冷静に見極め、批判と改善を考えなければならないと思っているのだが、この報道などはそうした冷静さが感じられず、報道の役割が放棄されたとしか思えない。



●テレビに見るレポーター
 記者会見の様子を目にするが、記者の語気の荒さには不快感が残る。レポーターやキャスターも、怒りを露わにした語気でニュースを読み上げ、感想を一言口にするが、冷静に見て適切でない批判をよく目にする。

 上述のように、重要なものが何かを見極め、それを冷静に報道することこそがメディアの役割であろう。怒りの様子は被害者周辺の様子を見れば充分伝わるものであるし、第三者であるメディアが怒りを露わにしていても、それは演技しているものとしか映らない。



●報じたことへの責任
 JR西日本が最初の会見で置き石説を唱えたが、後にそれは間違いだったとわかった。このことに対して、報道はいっせいにJR西日本を糾弾した。しかし、JR西日本の発表を鵜呑みにして報じたメディアも、そのことについて責任は持つべきだと思う。

 僕でさえ、最初の会見内容は割り引いてみた。メディアはそうした疑いを挟まず、会見の内容を垂れ流した。ただ垂れ流しておいて、後で手のひらを返すというのはおかしなことだと思う。誤った情報を報道してしまったのなら、それを報道したことを自ら恥ずべきだし、謝罪もあって然るべきだと思う。

 特に事故原因については二転三転して、様々な推測が垂れ流されたが、誤った推測を広く報じてしまったことへの反省が全く見られないのは、メディアとしてのポリシーを疑う。



 以上のような「悪役の仕立て上げ」を象徴するのが以下の報道のように思う。

JR西の新幹線や在来線、停止位置ミス相次ぐ (読売新聞) - goo ニュース

 電車の停止位置がずれることなど、そう珍しいことでもないだろう。それをこうも仰々しく報じるというのは解せない。1ヶ月前ならば確実に報じられなかったことがこうも大きく報じられるのは違和感がある。

 そして、「悪役の仕立て上げ」がもたらしたものが以下の結果ではないだろうか。

運転士や車掌などへの嫌がらせ、事故後70件…JR西 (読売新聞) - goo ニュース

 あくまでも非があるのはJR西日本。しかし、70件もの嫌がらせを引き出したものは報道に他ならないと思う。

事故以降も後を絶たないオーバーランや不祥事も影響しているとみられている。


 今までしていなかったオーバーランの報道をして、悪役づくりを熱心にして起こった結果だろう。メディアの厚顔無恥ぶりにも呆れたものだ。ふつうに考えて、こんな筋違いの怒りを筋違いの行動にうつす人間がこうも頻発するとは思えない。メディアがJR西日本への怒りを助長したと考えられるのだ。



 下記のブログでは、上記のような「ヒール」作りを否定し、自己の解明がどういうものであるべきかのモデルケースを示していらっしゃる。むしろ報道とはかくありたい。

カトラー:katolerのマーケティング言論:JR西日本、悪玉論を排す



 目に見える部分での報道への批判を書いたが、目に見えない部分での批判もネット上ではよく見かける。ヘリコプターだとか、事故現場への密集だとか。こちらは天漢日乗さんに詳しい。

 直接の関係はないものの、下記のような事件を生む風土がメディアにはあるという点は到底看過できない。

フラッシュ誌の契約記者ら、住居侵入で逮捕 (読売新聞) - goo ニュース

 たまたまJR西日本のニュースを席巻させている最中だったから、目立たないニュースとして終わったが、何をしても許されるという意識、読者を甘く見る意識に見られる傲慢さを自己批判しない限り、メディアを信用はできない。こうした批判は新潟中越震災のときのものが繰り返されている部分がある。構造的に問題があるのはメディアも同じであって、改善しないうちは公共性など標榜する権利はない。



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愛欲の解毒場:JR西日本脱線事故の報道
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D.D.のたわごと:福知山線事故(3)…マスコミにもの申した?番組
la3751の日々雑感:ブログが変える世論形成の仕組み。
かきなぐりプレス:マスコミ報道が暴行被害を生んでいる
竹林:マスコミのお仕事
やの日記:やっと気づいたのかよ
日々是口実:存在とは純粋な喜びである。悲しみとはすべて影の如きものにすぎぬ。悲しみは移ろい行き、 いつしか果ててしまう。(法の書 アレイスター・クロウリーより。)



■関連リンク
JR福知山線脱線事故
 ※福知山線列車事故関連のニュースを逐一ピックアップしているブログ
天漢日乗
 ※福知山線列車事故関連でメディアに報道されない点も2ちゃんねるなどからピックアップしているブログ



■関連エントリー
ニュースと私(44) 福知山線事故――JR西日本
ニュースと私(42) 福知山線事故でもアンビリーバブルが?
社会と私(6) 進歩しない遺族の報道
社会と私(4) 企業が謝罪するとき





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コメント
この記事へのコメント
>金塚崇さん
- 管理人 #- | URL |
コメントありがとうございます。
メディアの情報って、無料か格安で手に出来る状況なのですが、それでもその内容には読者がきちんと終生作業を施していかないとならないと思います。
2005/05/11(Wed) 22:07:34[ 編集 ]
成程。(笑)
- 金塚 崇 #H6hNXAII | URL |
はじめまして。TBさせて頂きます。
嗚呼、人生はドラマで、人は平穏を好んではいないようですね(笑)
勧善懲悪が大好きで。
「正しい位置」を探してる。
2005/05/10(Tue) 04:01:10[ 編集 ]
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- 日々是口実
いよいよ始まった。徐々に、言われ始めた。今回の大儀名分は「メディアのしている事はJR西叩きではないのか。」そして、これは広がって行くだろう。いつまで、いや。一体、「報道は正義。」がまかり通るのだろう。言い出したのは一体誰だ?・・・残念な事に、私は浅学なも
2005/05/10(Tue) 03:54:05
- やの日記
■取材している屑の問題以外にも【社会部発】「罵倒だけ…恥ずかしい」 「客観報道」へ自戒取材しているマスコミ(つまり賎業にしかつけない屑の集団)の手先だけではないんだけどね。運転士の職場復帰や社員の自由時間の「合法的かつ合理的」な過ごし方に因縁つける記事を選
2005/05/09(Mon) 08:05:06
- 竹林
最近のマスコミの取材・報道の方法に対し色々な意見があるようですが、実はマスコミというのは、ニュース=新しいできごと報道=ニュースなどを知らせること.マスコミ(ュニケーション)=新聞などの情報の大衆への大量伝達マスメディア=マスコミの媒体(新聞・放送など)(三省
2005/05/09(Mon) 03:46:16
- かきなぐりプレス
事故当日、ボーリングにゴルフ、宴会。そんな会社の社員は人道的に許せん! そりゃ、あれだけ連日に亘ってJR西日本は酷い会社なんだということを垂れ流せば、バカな奴がこんな行動を起こすことは、マスコミとて当然予見していたはず。JR西日本の運転士や車掌が心無い乗客か
2005/05/08(Sun) 21:06:49
- la3751の日々雑感
 先日、日経新聞の新聞記者が書くコラムに、ブログについての論評が載っていました。 その方は、ブログについて、ネガティブに考えているようで、「ブログを書く人は有名になりたいのか」という書き方をしてました。 この方からすれば、ニュースや時事評論というのは、マ
2005/05/08(Sun) 20:41:57
- マスコミの行動トラックバックセンター
JR福知山線事故報道では,JR西日本幹部の会見における罵声記者,被害者や遺族に対するえげつない取材,JR西日本を悪者に仕立て上げる重箱の隅をつつく感情的な報道などマスコミの態度が目につきます。JR福知山線脱線事故報道におけるマスコミのおかしな態度や問題行
2005/05/08(Sun) 18:33:53
- D.D.のたわごと
前回のエントリー「JR福知山線事故(2)…マスコミ,おかしくないか?」(100を超えるTBいただきました。皆さんありがとうございます)のコメント欄に,> こんな偏向報道の風潮に正面切って反論できるのは,> 今の芸能界(←テレビにジャーナリズムはないということで)
2005/05/08(Sun) 18:07:26
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