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『国語教科書の思想』


国語教科書の思想



石原千秋『国語教科書の思想』(ちくま新書 2005/10)

内容紹介:
戦後の学校教育は子供の人格形成を使命の一つとしてきた。現在、その役割を担っているのが国語である。「読解力低下」が問題視される昨今、国語教育の現場では何が行われているのか?小・中学校の教科書、なかでもシェアの高いいくるかの教科書をテクストに、国語教科書が子供たちに伝えようとする「思想」が、どのような表現や構成によって作られているかを構造分析し、その中に隠されたイデオロギーを暴き出す。

読書期間:2005/11/18-11/21
評価:★★★★☆(4点/5点)


 小森陽一氏と並んで新進気鋭の漱石研究者だった石原千秋氏なのだが、息子さんの中学受験を機に、ここ五、六年は、学校の国語、受験国語についてをライフワークにしている。いまではある国語教科書の編集委員に名を連ねるほどだ。といっても、小森氏もまた編集委員の仕事を持ってはいるのだが。

 学生時代に非常に多くの論文を参考とする機会のあった僕としては、この活動には何だか違和感をもってもしまうのだが、文学の方法を一般社会に還元しようとする姿勢は否定はできないと考えている。

 さて、本書であるが、文学研究の論文の書き方が身に染みてしまっているのか、非常にガードがかたく、敷居の高い印象が残る。僕の場合は学生時代の経験で、さほど不思議な感覚はもたないのだが、主に一般人が購入する書籍でこの書き方はないだろうと感じる。

 どういうことかというと、総じて、アラ探しをされてツッコまれないようにと、ことわりを述べながらの論の展開が多いのだ。文学研究においても、論文を発表するたびに論争を挑まれていた印象がある石原氏なので、こうした書き方が身についているのだろう。

 まあ、国語教科書についての批判をし、仮説と新たな提案をしているわけだから、身を守ろうとするのも無理はない。ただ、こうした書き方のせいで、文章の小気味よさが奪われて、まわりくどいことは確かだ。



 内容の方はというと、大きく分けて三部の展開をする。はじめに、国語という教科がどうあるべきかという提案をし、残りの二部で小学校と中学校の教科書をそれぞれ分析する。

 国語科が道徳教育になっており、リテラシー科と文学科に再編すべきだという論は、納得できるところがある。特に、リテラシー科という点では、「メディアリテラシー」という言葉が市民権を得た昨今では、導入を大きく検討すべき側面だろう。

 また、小学校一年生から六年生までの教科書を一冊の本として分析しようという試みは、国語が道徳教育であるという論を援護する点でも当たっていると思う。繰り返し、何年もかけて価値観の教育がなされているというのは、一冊の本として解釈するからこそで、またそうした解釈は的をいていると思った。

 教科書の分析のほうでは、主に光村の教科書を分析しているのだが、驚いた点があった。それは、筆者の批評ではなく、筆者が取り上げた教材が、僕が読んだことのある作品だった点である。

 僕は小学校を卒業して十年以上経っている。けれども、教科書の主力は、僕が読んできた教科書とさして変わりはないということなのだ。確かに、長く価値をもって読まれるべき作品もあるだろうが、それにしても、十年単位で作品の入れ替えがほとんど行われないというのは、実社会を反映しない学校教育という側面として認識されてしまう。

 確かに、生き物や環境の説明文があり、夏ごろには太平洋戦争関連の作品を読まされ、また、動物ものの小説を読むという展開が年間の国語授業の印象でもある。

 これを道徳教育、つまり思想教育ととらえても差し支えあるまい。

 学校教育を受けてきて、何となく感じてきたことを、きちんと整理して言葉にして提示した点に、この本の価値はあると思う。「何となく」を言葉にして明快に認識することは重要なことだし、これを踏まえて学校教育を見ていくことは重要だろう。



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コメント
この記事へのコメント
>yske67_67さん
- hcomedy #2mK3jtMU | URL |
コメントありがとうございました。
異論大歓迎です。けれども、この本の評価については、批評対象を異にしていて、ズレているだけかなという印象をもちます。

自分としては、この本の論を全面的に肯定したわけではないです。ただ、批判するに際しては、新たに提案を加えなければ建設的でない、ただ批判をするだけでは意味がないと考えておりますので、そういう点では、批判をしていません。

なんといっても、新たな提案はあるかと言われて現実的なものを思いつかないものでして。。。

いずれにしても、TBありがとうございました。いろいろなご意見を拝見できると勉強になります。
2005/12/05(Mon) 01:33:47[ 編集 ]
- yske67_67 #- | URL |
 トラックバックさせていただきました。この『国語教科書の思想』についての評価は、大分違いますけど、どうぞよろしく。
2005/12/04(Sun) 19:11:28[ 編集 ]
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私の一応の肩書きは「院生」ですが、こんな肩書きではめしは食えないので、一週間の何分の一かの時間は、しがない国語教師として生活しています。最近は投げやりな気持でバイトばかりしていて、逆転現象が起こっていますけど。そんなもう一つの私の視点から、気になる本をふ
2005/12/04(Sun) 18:22:30
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