人間喜劇
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 先日、TBS深夜放送の『バース・デイ』を見ていた。『ZONE』の血をひく番組で、スポーツに限らないが、主にアスリートの裏側を追っていく番組である。

 今週の特集は、日本一を決めた千葉ロッテマリーンズの初芝清選手だった。先日のマリーンズの裏側の特集を見逃してしまっていたため、同じ失敗は二度繰り返さないように、必至でチェックした。

 感想としては、『バース・デイ』のような番組にかかってしまうと、初芝選手のような人でも、まじめな一選手に作り上げられてしまうのだなというものである。

 この特集では、初芝選手の魅力が全く伝わってこなかったのだ。現役生活で優勝と縁のなかった選手が、引退を発表した後、初の日本一を経験するという物語に仕上がったわけだが、これでは一般的なプロ野球選手の一人として、あまりにも平板な印象しか残らない。

 なぜ初芝選手があんなにも愛されたのか、その魅力を伝えることには完全に失敗しているわけで、真面目な番組の弱点である。



 初芝選手は、パシフィック・リーグびいきである僕としても、思い入れの深い選手である。これを機に、思いを書き留めてみたい。

 マリーンズが本拠地とするのは、千葉マリンスタジアム。海の近くである。潮のにおいが強く、球場に観戦に行って帰る頃にはすっかり肌が潮でベトベトしてしまう球場である。海風が非常に強いのだ。その影響で、フライの打球はふらふらと右往左往しながらポトリと落ちる。

 マリンスタジアムでサードにあがるファールフライを、僕は心待ちにしたものだった。落としても直接的な被害は受けないファールフライである。それがフラフラと上がると、三塁手がドタドタと落下点へと走る。いまどき珍しく、アンダーソックスを黒々と見せて地面を揺らすその背番号は6番。打球が右往左往するのに合わせてあっちへドタドタ。こっちへドタドタ。そして最後にはダイビングキャッチ!を試みるも、必ずフライを落としてしまう。

 このコミカルな動きに初芝選手の魅力は集約されている。マリンスタジアムに来るファンは、サードへのファールフライを心待ちにしているのである。アウトのチャンスをフイにするも憎めない、そんな姿が、「ロッテ」というチームを象徴しているようで、みんな彼に夢中になってしまう。ミスターロッテと呼ばれる由縁である。



 2002年のシーズンだっただろうか。西武ライオンズがペナントレース制覇へ向けてマジック1となった試合。その対戦相手は千葉ロッテマリーンズだった。当時のマリーンズは、胴上げ阻止率100パーセントを誇る素晴らしいチームだった。

 この試合、チームはその実力をいかんなく発揮する。初芝選手が決勝の打点を放ち、9回のマリーンズの守備。マウンドに立つのは勿論守護神小林雅英投手で、ライオンズの胴上げは持ち越し濃厚となっていた。

 ここで平凡なサードゴロが飛ぶ。背番号6番はその何でもないゴロを捕り損ねる失態を犯してしまう。勝敗には関係ないところでエラーをしてくれて、野球というエンターテインメントを存分に堪能させてくれる初芝選手を、人は愛をこめてファンタジスタと呼ぶ。

 勝利打点を放ったので、その日のお立ち台は初芝選手だったわけだが、「最後はやっちゃってすいませんでした」と照れながら笑う初芝選手に、みんなは笑い、一層の親近感をおぼえていた。



 少し真面目な話をしよう。打点王をとったこともある初芝選手なので、その打棒たるやというイメージがあるかもしれない。しかし、粗いバッティングがその本質だったと僕は感じる。弱いチームで過ごしてきただけに、自分の成績を優先する態度が染み付くのは当然のことだと思う。

 そういう姿が発露した場こそ、プレーオフ決勝の対福岡ダイエーホークスの最終戦だと僕は思う。代打で出場した初芝選手は、高めの球に手を出し、ボテボテのゴロが三遊間に飛んだ。運良くホークスのサードショートの交錯を呼び、後続がヒットを打って初芝選手はホームに生還、これが決勝点となって、マリーンズは日本シリーズの切符を手にすることになった。

 『バース・デイ』では、引退を決めた男の勝利への執念が呼んだエラーという具合に描かれていたが、これは美しい物語を試みようとしすぎである。だからこそ、『バース・デイ』は初芝選手を平凡にしか描けずに失敗した。あの打球には、弱いチームで生きてきた選手の悲哀と、ファンに笑いを与え続けてきた選手が呼んだ最後の「笑い」という裏表がかいま見られるのだ。



 惜しむらくは、初芝選手が最後に優勝を経験してしまった点にある。彼の野球人生を考えれば、優勝経験をしたことはよいことではある。しかし、優勝経験をしてしまったことは、「ミスターロッテ」を冠するには何か違和感が出てくるのだ。そういう意味で、「ミスターロッテ」の王道を歩んだのは園川投手だったなあという思いもする。「園川の前に園川なし。園川の後に園川なし。」である。



 初芝選手に寄せる思いは、ファンの一人一人にいろいろなかたちであると思う。関連リンクでご紹介する各記述をご参照いただきたい。間違いないのは、誰もが初芝選手を愛していたということだ。



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■関連リンク
初芝清 - Wikipedia
はてなダイアリー - 初芝清とは
大河ドラマ初芝清(○з○)
千葉ロッテマリーンズAA 初芝清
切込隊長BLOG(ブログ) - 初芝の思い出
FUJI Ⅱ’S WEB SITE:初芝清
マリンブルーの風

最後のオリオン 園川一美



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