人間喜劇
気が向いたとき気が向いたことを書いていきます。。。

教育と私(7) 消える長文 | トップページ | 野球と私(32) 田尾監督解任
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

この記事のトラックバックURL
http://humancomedy.blog7.fc2.com/tb.php/203-e35ef753

■『人間喜劇』目次
『人間喜劇』の目次はこちら
トラックバック(-) コメント(-)
『ヒトラー~最期の12日間~』
【※ネタバレあります※】


ヒトラー 最期の12日間
原題:DER UNTERGANG
製作年:2004年
製作国:独国  155min.

・監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
・製作:ベルント・アイヒンガー
・脚本:ベルント・アイヒンガー
・出演:ブルーノ・ガンツ/アレクサンドラ・マリア・ララ/コリンナ・ハルフォーフ


『ヒトラー ~最期の12日間~』オフィシャルサイト
ヒトラー ~最後の12日間~ - goo 映画
ヒトラー~最期の12日間~@映画生活
ヒトラー ~最期の12日間~ - allcinema ONLINE


内容紹介:
 ヒトラーが地下の要塞で過ごした最期の12日間に焦点を当て、彼の個人秘書を務めたトラウドゥル・ユンゲの目を通して歴史的独裁者の知られざる側面を浮き彫りにしていく衝撃の実録ドラマ。監督は「es[エス]」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。主演は「ベルリン・天使の詩」「永遠と一日」のブルーノ・ガンツ。歴史家ヨアヒム・フェストの同名ノンフィクションとヒトラーの個人秘書ユンゲの回顧録を原作に、戦後最大のタブーに真正面から挑んだ問題作。
 1942年、トラウドゥル・ユンゲは数人の候補の中からヒトラー総統の個人秘書に抜擢された。1945年4月20日、ベルリン。第二次大戦は佳境を迎え、ドイツ軍は連合軍に追い詰められつつあった。ヒトラーは身内や側近と共に首相官邸の地下要塞へ潜り、ユンゲもあとに続く。そこで彼女は、冷静さを失い狂人化していくヒトラーを目の当たりにするのだった。ベルリン市内も混乱を極め、民兵は武器も持たずに立ち向かい、戦争に参加しない市民は親衛隊に射殺されていく。そして側近たちも次々と逃亡する中、ヒトラーは敗北を認めず最終決戦を決意するが…。

評価:★★★★☆(4点/5点)
ヒトラーよりも組織論とかに興味が向いた。
・2005/09/25 MOVIX橋本


 鑑賞後の感想の第一声としては、邦題のセンスの悪さには呆れるということを言っておきたい。もう最悪だ。

 原題は『DER UNTERGANG』。辞書的には、「【1】(太陽・月などの)入り【2】沈没【3】没落,滅亡,破滅」という意味になる。「ヒトラー」とタイトルをつければ客が呼べるということなのだろうが、映画の内容とかけ離れすぎる。この映画は、ただヒトラーにのみ焦点を絞ったものではない。ぱっと思いつく感じでタイトルをつけるとすれば、『第三帝国の瓦解』とか。あ、僕もセンスないな。。。しかし、『ヒトラー~最期の12日間~』というタイトルで勘違いをさせる点はかなりマイナスである。

 さて、宣伝的要素は配給会社の問題なので、映画自体の内容の方の感想を書きたい。



●ヒトラーの描写
 1942年を最初に描き、自殺直前を描くことで、左手の震えの描写が生きた。

 彼の猜疑心がよく伝わってくる。会いに来る者に対して忠誠を確認でき安心する一方、会いに来ないものは裏切り者と決め付ける。その猜疑心は、人が多い空間であればあるほど高まり、左手の震えは大きくなる。シュペーアと一対一で話をしているときに、彼の「裏切り」の独白を聞いたときには、ヒトラーは冷静さを何とか保ち、左手の震えも目立たなかった。

 しかし、作戦会議で狭い部屋に20人弱が集まる空間にあると、その猜疑心は在席する全てのものへ向けられ、状況が思い通りに行かないこと、部下からの反対意見に直面して、左手の震えは激しくなり、錯乱の中で演説を始める。口にするのは裏切り、裏切り、裏切りだ。

 猜疑心のかたまりだからこそ、降伏はしないし国民も道連れにする。忠誠を確認したいのだろう。

 惜しむらくは、ヒトラーのしてきたこと――ユダヤ人虐殺、領土的野心など――が当然のこととして頭に浮かんでこないことだろう。日本人として、この戦争のヨーロッパ戦線に詳しくないことで、映画の途中、ふとした瞬間に、この人物が悪魔であったことを忘れてしまう。この錯乱状態の人は何を犯した人だったかと思い出す作業を必要とする。



●市民の描写
 邦題を見ていると、市民のことなどあまり描かれないだろうと考えてしまうのだが、映画全編に渡って、一人の少年の行動を追っていく。

 洗脳により市民軍参加していたものが、その戦闘に疲れ、家に逃げ出してきたとき、少年は疲れ果てていた。ベッドで眠る少年をいたわり、母が祖父に向かい、「熱が…」と言うと、祖父は、「だが生きている」と言う。

 このシーンが、この映画の中で最も感銘的だった。血が流れる、熱がある。体調は悪くても、それこそが生きている証拠であり、価値あることなのだな。



●側近の描写
 官邸地下室という空間で、ソ連軍が迫る中の退廃の様子は印象的だ。はじめは禁煙だったはずの地下室が、酒盛りの場が作られ、タバコが蔓延する。特殊な状況下での秩序の失われ方として印象的である。欲を言えば、煙をもっとためた描写をすべきだったか。あんな閉鎖された空間で何十人もが煙草を吸っていたら、空気は煙にまみれて真っ白になり、煙たくて仕様がないだろう。そのあたりをもう少しリアルに描いてもらってもよかったかと思う。

 退廃的な状況へと陥る将校達と市民軍の対比も切ない。酒をあおっている暇があれば戦うべきかとも感じるのだが、彼らの任務はそれではない。さりとて、機能麻痺した総統からの命令がないので、なすすべもない。死を選ぶこともまだ許されない。

 いっぽうで、猜疑心深いヒトラーの洗脳が最後まで生きている点も見逃せない。側近はヒトラーを信じ、尊敬し、彼のために徹底抗戦し、最後には死を選ぶことが当然と考えている。

 ゲッベルス夫婦が最も印象的で、ヒトラーへの忠誠は非常に深い。自らの子どもまでも道連れにして死を選ぶ点で、洗脳の深さには驚くし、そうした価値観を植え付けることに成功したヒトラーの方法とは恐ろしいものだ。



●末期の組織
 この映画で最も考えさせられたことは、末期の組織運営である。

 敗戦濃厚にもかかわらず、いまだに勲章を与える風景があり、ナチス親衛隊(SS)が逃亡者を狩る風景がある。

 冷静に考えれば、これらの組織行動は、平時において民衆を管理するための方法だ。勲章を与えることで兵のモチベーションを高め、政策にそわない市民を弾圧することで誘導することができる。

 敗戦濃厚の状況でこれらを施行したところで、効果など認められるはずもない。しかし、手段の目的化が起こり、それらの行動は続けられる。人間の恐ろしさをかいま見る気がした。

 さらに最悪なのは、最高指揮官が機能麻痺しており、命令が発せられないことでその行動は続いていくことだ。命令がないことで、組織は混乱し、無駄な行動は続いていくのだ。狂った指導者を持つことで、攻撃される側ばかりでなく、その内部までも悲劇に見舞われるというのは、組織の運営として示唆あるものと感じられたし、組織内の個々の人物が考えをもって有機的に行動できるようにならなければ、危険に陥るのだと思った。

 トラウデル・ユンゲ本人の弁が最後に登場したが、一人一人に責任があるというのは、こういうことかなと感じた。



■トラックバック送信先
MyPersonalLinks+:ヒトラー ~最期の12日間~原題「Der Untergang」=「没落・破壊」
MyPersonalLinks+:「ヒトラー~最期の12日間~」の公式ブログ 等々【追加情報】
ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!:ヒトラー ~最後の12日間~
肯定的映画評論室Blog支店:『ヒトラー ~最期の12日間~』、観ました。
肯定的映画評論室・新館:『ヒトラー ~最期の12日間~』、観ました。
Blog・キネマ文化論: ヒトラー・最期の12日間 評価額・1800円
桂木ユミの「日々の記録とコラムみたいなもの」:殺人鬼ヒトラーの内面を描く◆『ヒトラー ~最期の12日間~』
ネタバレ映画館:ヒトラー ~最期の12日間~
極私的映画論+α:ヒトラー ~最期の12日間~ (2004) DER UNTERGANG 155分
soramove:「ヒトラー ~最後の12日間」彼も普通の人間だった
試写会帰りに。:「ヒトラー ~最後の12日間~」
試写会帰りに: 「ヒトラー ~最後の12日間~」
利用価値のない日々の雑学:ヒトラー 最期の12日間
平気の平左:止まれない暴走の末の狂気 「ヒトラー 最期の12日間」
KINTYRE’S PARADISE:映画『ヒトラー~最期の12日間~』を観て



■関連リンク
『ヒトラー ~最期の12日間~』オフィシャルサイト
ヒトラー ~最後の12日間~ - goo 映画
ヒトラー~最期の12日間~@映画生活
ヒトラー ~最期の12日間~ - allcinema ONLINE
田村伊知朗政治学研究室: 『ヒトラー~最期の12日間』死と犬死への序曲 完結編



■関連エントリー
映画と私(30) 『戦場のメリークリスマス』





私はヒトラーの秘書だった
トラウデル・ユンゲ 足立 ラーべ
加代 高島 市子
草思社 (2004/01/25)
売り上げランキング: 9,938



ヒトラー 最期の12日間
ヨアヒム・フェスト 鈴木 直
岩波書店 (2005/06/21)
売り上げランキング: 2,792



アドルフの画集
アドルフの画集
posted with amazlet at 05.09.26
アミューズソフト
エンタテインメント
(2004/08/27)
売り上げランキング: 5,127



独裁者 コレクターズ・エディション
ジェネオン エンタテインメント
(2004/03/21)
売り上げランキング: 1,485



NHKスペシャル 映像の世紀 第4集 ヒトラーの野望
NHKエンタープライズ
(2005/11/25)
売り上げランキング: 27,644



わが闘争 上―完訳   角川文庫 白 224-1
アドルフ・ヒトラー 平野 一郎
将積 茂
角川書店 (1973/10)
売り上げランキング: 3,211



わが闘争 下―完訳    角川文庫 白 224-2
アドルフ・ヒトラー 平野 一郎
将積 茂
角川書店 (1973/10)
売り上げランキング: 2,103


スポンサーサイト

この記事のトラックバックURL
http://humancomedy.blog7.fc2.com/tb.php/203-e35ef753

■『人間喜劇』目次
『人間喜劇』の目次はこちら
コメント
この記事へのコメント
>ichiroさん
- hcomedy #2mK3jtMU | URL |
コメントありがとうございます。

拙文をお褒めいただき恐縮です。組織に生きている人間ですので、どちらかというと関心がそちらに向いてしまいますので、ichiroさんとはまた違った視点をご提供できたのではないでしょうか。。

今後ともよろしくお願いいたします。
2005/10/26(Wed) 03:16:47[ 編集 ]
- ichiro #- | URL |
トッラクバックしました。記事を読んでいます。考えさせられる内容です。また、参考資料ともども、敬服しました。今後とも宜しくお願いします。
2005/10/25(Tue) 21:30:14[ 編集 ]
>きのこスパさん
- 管理人 #2mK3jtMU | URL |
お引越しとのこと、おつかれさまです(笑)。

戦争の美化ですか。僕もそんなものは感じられなかったです。ヒトラーの物腰の柔らかい部分(やさしいところではないと思います)は描かれてましたが、それも含めてヒトラーという人物という解釈は充分可能と思ってます。
逆に、ヒトラーは常に冷酷で残忍な人物でないといけないという深みにはまっている解釈と感じますね。

何はともあれ、今後ともよろしくお願いします。
2005/10/03(Mon) 20:38:30[ 編集 ]
これからも御ひいきに。
- きのこスパ #U2yBsZio | URL |
TB、ありがとうございます。
「肯定的映画評論室」のきのこスパです。
実はこのところ、ライブドアBlogの不具合から
引越しすることになりました。

ブログ引越し先のアドレスは、以下の通りです。
肯定的映画評論室・新館
http://blog.goo.ne.jp/toraneko7kinokosupa
これまで同様、「肯定的映画評論室・新館」をどうぞ宜しくお願いします。

さて、今作『ヒトラー~』については、
ロシアなどから「戦争を美化している」と批判があったらしいけど、
ボクはそんな風に感じなかった。
だって、戦争を善悪に分けるなんて出来ないし、
ヒトラー一人を“悪”として描くのはどうかな‥なんて。
彼を悪に走らせたのは他でもない、
“ファシズム”という思想だったんだから。
むしろ、この映画ではヒトラー死後の場面に、
“消えることのないファシズム支配”が
しっかり描かれているように感じました。
2005/10/02(Sun) 19:21:25[ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
- 映画と本と音楽にあふれた英語塾
ヒトラー ~最期の12日間~ スペシャル・エディションゴウ先生ランキング: A-早稲田松竹2006年1月25日(水)9:30からの回公式サイト: http://www.hitler-movie.jp/index2.html
2006/01/26(Thu) 20:17:33
- ~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録
以前にも掲示板で話題になりましたが。 過日、アントニー・ビーヴァーというイギリスの軍事史家が、ベルリン最終戦についての超力作ドキュメンタリー作品『ベルリン陥落1945』を発表して大いに評判となりました。単なる事件の記録にとどまらず、この戦場におけるドイ
2006/01/07(Sat) 12:07:25
- ~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録
以前にも掲示板で話題になりましたが。 過日、アントニー・ビーヴァーというイギリスの軍事史家が、ベルリン最終戦についての超力作ドキュメンタリー作品を発表して大いに評判となりました。単なる事件の記録にとどまらず、この戦場におけるドイツ側、ロシア側それぞ
2005/11/10(Thu) 01:30:18
- 田村伊知朗政治学研究室
http://www.hitler-movie.jp/index2.html (
2005/10/25(Tue) 21:27:56
- ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!
市原悦子主演「家政婦は見た!」ではなく、「女性秘書は見た!ヒトラーの真の姿を!!」映画の日、夜の部。この日4本目で最終。「ロボッツ」、「ポケモン」の2本のアニメと、オバカ人形劇「チーム★アメリカ」を鑑賞後の歴史映画。茶化したような書き出しで....
2005/10/09(Sun) 18:51:14
- 試写会帰りに
東京国際フォーラムホールD1「ヒトラー ~最後の12日間~」試写会。オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督がインタビューで「ヒトラーを人間的に描くというタブーに挑戦した。しかもドイツ人の自分が」という様な事を話していた。 主演のブルーノ・ガンツも「この役を引き受ける事.
2005/10/03(Mon) 19:01:36
- 肯定的映画評論室・新館
 『ヒトラー ~最期の12日間~』、映画館で観ました。1945年4月20日、ベルリン。ソ連軍の砲火を避けるために、ヒトラーはドイツ首相官邸の地下要塞に退却していた。すでに正常な感覚を失っていたヒトラーは部下に実現不可能と思える作戦を熱く語っていた‥‥。 観終わって
2005/10/02(Sun) 19:22:56
- [K]こあら日記
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル製作・脚本:ベルント・アイヒンガー出演:ブルーノ・ガンツ/アレクサンドラ・マリア・ララ/コリンナ・ハルフォーフ『ヒトラー 最期の12日間』オフィシャルサイト見終わってしばらく、久々に「いい映画だなぁ・・・」と感慨に浸った...
2005/10/02(Sun) 01:40:33
- 極私的映画論+α
 1942年、トラウドゥル・ユンゲは数人の候補の中からヒトラー総統の個人秘書に抜擢された。1945年4月20日、ベルリン。第二次大戦は佳境を迎え、ドイツ軍は連合軍に追い詰められつつあった。ヒトラーは身内や側近と共に首相官邸の地下要塞へ潜り、ユンゲもあとに続く。そこで
2005/09/27(Tue) 07:43:31
- 桂木ユミの「日々の記録とコラムみたいなもの」
8月11日(木)名演小劇場にて 2004年2月に、私は『アドルフの画集』という映画を観た。独裁者になる前の青年時代のアドルフ・ヒトラーは絵を描くことが好きで、ある画商との出会いによって一時は画家を目指すのだが、次第に政治運動に傾倒して行った…というストーリーで...
2005/09/27(Tue) 07:07:09
- ネタバレ映画館
 アドルフ・ヒトラーはユダヤ人だった!という仮説は大好きなのですが、それを想像させるシーンもあった・・・ それはエヴァとの質素な結婚式。「汝はアーリア人か?」と訊かれた瞬間のやりとりで、絶妙の間にゾクゾクしてしまった。実際にはその点を突くようなストーリー
2005/09/27(Tue) 02:22:35
- 民主たぬき党~The Democratic Raccoondog Party
こんばんわ。DRP代表のたぬきさんです。金曜日、再び映画を観てきましたのでそのご報告です。今回は盟友テオ氏の希望でヒトラー~最期の12日間~を観てまいりました。おいらは歴史に対しての興味が強く、第二次世界大戦にまつわる本も何冊か読んだことがありま....
2005/09/26(Mon) 16:33:40
- ??
?{/fuki_cool/}????Σ??????????????????????????????顢??????????α?Ρ????????ä?ν?????????κ?Σ?Τ?Τ??κ?餫鶸?????ä?????Ρ????Υ???ĤΡ????Τ?????????????????ä?????Ĺ?ξ????餺?????ä??????????Τ????????????ΤĤμ?鶸??å????ä???Τ?ξ????ι?
2005/09/26(Mon) 14:06:26
COPYRIGHT © 2005 人間喜劇 ALL RIGHTS RESERVED. POWERED BY FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。