人間喜劇
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 捕手のサインがよく見えなかった。だから確認しようとした。その瞬間、主審は駆け出しボークを宣告、三塁ランナーがホームに還り、エース藤田修平の二年夏は終わった。何が何だかわけがわからなかった。

 横浜高校松坂大輔が甲子園の大地に伝説を残した第八十回大会、山口県代表校は宇部商業。そのマウンドには二年生のエース藤田が立ち続けた。

 二回戦の愛知県代表豊田大谷戦、やはり藤田はマウンドに登り続けていた。大会屈指のパワーヒッター古木(現ベイスターズ)を抑えながらも、優劣はつかず、延長戦を戦う。

 この大会では横浜対PL学園の延長17回が印象深いが、この延長も15回を数えている。

 2-2の延長15回裏に何が起こったのか。エラーなどもあり、無死満塁の絶体絶命の場面となる。球数は210球を数えていた。疲労、暑さ、どこかに忍び込んだ気の緩み。セットポジションを取ろうとしたときに、ふいにキャッチャーのサインが変わった気がして、上げかけた腕を元に戻した。

 林球審の反応は早く、すかさずボークが宣告された。

 呆然とした表情の藤田。時間が経つうちに、三年生の夏を自分のミスで終わらせてしまったことにとめどない悔いが襲ってくる。

 けれども、誰も藤田を責めたりはしない。甲子園に来れたのは藤田のおかげ。延長十五回、二百球以上の投球でマウンドを守ってくれたのは誰でもない藤田だ。三年生は藤田にこう声をかけた。気にするな。来年の夏、また甲子園に行ってくれよ。

西日本新聞 西スポ50周年企画 アマ列伝
高校野球新世紀・第3部 名勝負数え歌



 いままさに2005年の甲子園の覇者が決まろうとしているのに、なぜ八年も前の記憶を書き出した(上記の文は自作である。参考は上記リンク先。敬称略をご寛恕いただきたい。)のか。宇部商業のエース好永投手に、八年前の宇部商業エース藤田投手の悲哀が重なったからである。

 好永投手も地方大会から準決勝まで、一人で投げきってきたという。好永投手の力でベスト4まで勝ち残ることができた。しかし、連投で蓄積する疲労。照りつける日差し、特に甲子園のマウンド上は40度にのぼるという。

 相手もここまで勝ち残ってきた実力者、得点を重ねられていく。シーソーゲームを続けるなか、それでもリードして迎えることができた九回表のマウンド。あと三人で決勝戦。そこに忍び込んだのは疲労だったのか、体力の消耗だったのか、それとも。。。

 ノーアウト一、三塁のピンチを迎えてしまうも、ピッチャーゴロを打たせて三塁ランナーを三本間にはさむ。確実にアウトにして、ワンアウト一、二塁に場面は変わるはずだった。

 しかし好永投手は、三塁ランナーを追い詰めきれず、三塁に帰塁させてしまう。呆然となったところに、バッターランナーが一塁を飛び出しているところが目に入った。普段の練習ならば、無理をせずに刺そうとはするまい。

 しかし好永投手はファーストに送球する。しかしそれはファーストの頭を大きく超えた暴投だった。二者生還で逆転を許してしまう。結局この回四失点。九回裏に得点を入れるも力尽き、宇部商業の夏は終わる。

 しかしながら、エース好永貴雄投手は最後までマウンドを守り抜いた。この日164球。

京都外大西が初の決勝へ、粘る宇部商を振り切る (読売新聞) - goo ニュース



 九回表、164球を投げ抜き、ベンチへと帰る好永投手に対しては、八年前のあの日と同じ拍手が贈られていた。

 二人のエースに通じるもの、宇部商業のマウンドを一人で守り抜き、チームを引っ張っていったこと。それがもたらした疲労、体力の消耗、そして気の緩み。「たられば」が頭をよぎってしまう苦い記憶。。。。

 甲子園は時に複雑な感情を僕にもたらす。でも、僕は何年経っても彼らを忘れない。



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しみじみ地味日記:悪送球



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西日本新聞 西スポ50周年企画 アマ列伝
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コメント
この記事へのコメント
>セントさん
- 管理人 #2mK3jtMU | URL |
コメントありがとうございます。

こんな展開を期待して高校野球を見ているわけではないのですが、それでもこういう場面に出会うと心が動きますよね。是非とも今後の人生の糧としてほしいと思うところです。。
2005/08/29(Mon) 00:15:16[ 編集 ]
トラバ御礼
- セント #- | URL |
プロ顔負けの設備や全国各地から優秀な選手を寄せ集めてくる最近の高校野球には、あまり関心が持てなくなっていましたが、たまたま見た好永投手に興味を持ち、その後の試合は陰ながら応援していました。

残念な結果に終わってしまいましたが、自らの悪送球が敗因となる負け方もドラマチックで、久しぶりに高校野球らしさを見られたような気がしています。
2005/08/27(Sat) 13:06:55[ 編集 ]
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