人間喜劇
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『児玉源太郎 神謀と奇略の大軍師』


児玉源太郎―神謀と奇略の大軍師



中村晃『児玉源太郎 神謀と奇略の大軍師』(PHP文庫 1999/10)
※『大軍師児玉源太郎』(叢文社 1993/07)を加筆改筆、再編集、改題

内容紹介:
優秀な日本海軍の兵士は、いかなる「教育」によって生み出されたのか?江田島兵学校から航海実習まで、豊富な資料とエピソードによって描く。

読書期間:2005/11/21-11/30
評価:★★★☆☆(3点/5点)


 『児玉源太郎』と大々的に銘打ち、「神謀」「奇略」の造語でその鬼才ぶりをさぞやと想像させる割には、源太郎に関する記述は非常に薄い。読後の印象ではむしろ、乃木希典のそれの方が強い。

 正直言って、以前読んだ『日露戦争名将伝』の児玉源太郎の項数ページと、内容的にさして変わりはない。著者は、源太郎について何を取材していたのだか、よくもまあ、こんなにも大々的児玉源太郎を謳えたものだと、逆に感心してしまう。

 さりとて、この本の評価が最低になるかというと、そうではないのだ。

 日露戦争に至るまでの幕末からの政治史が懇切丁寧に描写されており、非常にわかりやすいのである。平板な高校の日本史教科書の横におき、話をふくらませるためには丁度よい話の流れをおさえている。これがものすごくバランス感覚にすぐれ、読みやすいのである。

 なぜ日露戦争に至ったかは、幕末からの政治史を理解しなければ到達できない。それが著者もわかっていたから、幕末から描き始めたのだろう。源太郎は日露戦争直後に急死しているから、幕末から日露戦争という期間の政治史としては必要十分なのである。

 だから、タイトルさえうまく考えれば、これは大変な良書だとも思える。幕末から日露までという目的があるのならば、これは大変有用だ。けれども、児玉源太郎の心理描写をよく知りたいという方にはおすすめできない。



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『国語教科書の思想』


国語教科書の思想



石原千秋『国語教科書の思想』(ちくま新書 2005/10)

内容紹介:
戦後の学校教育は子供の人格形成を使命の一つとしてきた。現在、その役割を担っているのが国語である。「読解力低下」が問題視される昨今、国語教育の現場では何が行われているのか?小・中学校の教科書、なかでもシェアの高いいくるかの教科書をテクストに、国語教科書が子供たちに伝えようとする「思想」が、どのような表現や構成によって作られているかを構造分析し、その中に隠されたイデオロギーを暴き出す。

読書期間:2005/11/18-11/21
評価:★★★★☆(4点/5点)


 小森陽一氏と並んで新進気鋭の漱石研究者だった石原千秋氏なのだが、息子さんの中学受験を機に、ここ五、六年は、学校の国語、受験国語についてをライフワークにしている。いまではある国語教科書の編集委員に名を連ねるほどだ。といっても、小森氏もまた編集委員の仕事を持ってはいるのだが。

 学生時代に非常に多くの論文を参考とする機会のあった僕としては、この活動には何だか違和感をもってもしまうのだが、文学の方法を一般社会に還元しようとする姿勢は否定はできないと考えている。

 さて、本書であるが、文学研究の論文の書き方が身に染みてしまっているのか、非常にガードがかたく、敷居の高い印象が残る。僕の場合は学生時代の経験で、さほど不思議な感覚はもたないのだが、主に一般人が購入する書籍でこの書き方はないだろうと感じる。

 どういうことかというと、総じて、アラ探しをされてツッコまれないようにと、ことわりを述べながらの論の展開が多いのだ。文学研究においても、論文を発表するたびに論争を挑まれていた印象がある石原氏なので、こうした書き方が身についているのだろう。

 まあ、国語教科書についての批判をし、仮説と新たな提案をしているわけだから、身を守ろうとするのも無理はない。ただ、こうした書き方のせいで、文章の小気味よさが奪われて、まわりくどいことは確かだ。



 内容の方はというと、大きく分けて三部の展開をする。はじめに、国語という教科がどうあるべきかという提案をし、残りの二部で小学校と中学校の教科書をそれぞれ分析する。

 国語科が道徳教育になっており、リテラシー科と文学科に再編すべきだという論は、納得できるところがある。特に、リテラシー科という点では、「メディアリテラシー」という言葉が市民権を得た昨今では、導入を大きく検討すべき側面だろう。

 また、小学校一年生から六年生までの教科書を一冊の本として分析しようという試みは、国語が道徳教育であるという論を援護する点でも当たっていると思う。繰り返し、何年もかけて価値観の教育がなされているというのは、一冊の本として解釈するからこそで、またそうした解釈は的をいていると思った。

 教科書の分析のほうでは、主に光村の教科書を分析しているのだが、驚いた点があった。それは、筆者の批評ではなく、筆者が取り上げた教材が、僕が読んだことのある作品だった点である。

 僕は小学校を卒業して十年以上経っている。けれども、教科書の主力は、僕が読んできた教科書とさして変わりはないということなのだ。確かに、長く価値をもって読まれるべき作品もあるだろうが、それにしても、十年単位で作品の入れ替えがほとんど行われないというのは、実社会を反映しない学校教育という側面として認識されてしまう。

 確かに、生き物や環境の説明文があり、夏ごろには太平洋戦争関連の作品を読まされ、また、動物ものの小説を読むという展開が年間の国語授業の印象でもある。

 これを道徳教育、つまり思想教育ととらえても差し支えあるまい。

 学校教育を受けてきて、何となく感じてきたことを、きちんと整理して言葉にして提示した点に、この本の価値はあると思う。「何となく」を言葉にして明快に認識することは重要なことだし、これを踏まえて学校教育を見ていくことは重要だろう。



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国語教科書の思想
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『日本海軍のこころ』


日本海軍のこころ



吉田俊雄『日本海軍のこころ』(文春文庫 2002/12)

内容紹介:
優秀な日本海軍の兵士は、いかなる「教育」によって生み出されたのか?江田島兵学校から航海実習まで、豊富な資料とエピソードによって描く。

読書期間:2005/10/28-11/18
評価:★★★★☆(4点/5点)


 吉田俊雄氏の書籍は、下記のもの以来である。

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 超高齢者の書籍ということで、本書も文字通り海上に浮かぶようにおもしろさに波があった。

 概して、海軍の手前味噌という側面が否めない。海軍の教育は素晴らしかったと連呼し、米海軍に最も苦戦した相手だったと言わしめたと誇るが、歴史の事実としての、誤った戦争への突入という点に関して、何一つ論理的な説明が付されない。したがって、海軍教育の素晴らしさについて、何一つの真実味もない。

 佐々淳行氏が著書で頻繁に言及する「海軍次室士官心得」というものがある。『わが上司 後藤田正晴』など、上司が部下を管理するノウハウを述べた時には、佐々氏は、これが非常に参考になったと、必ずその内容を紹介する。

 その著書では、「海軍次室士官心得」は、部下管理の基本を抑えたものと感じるし、日本海軍が優れた組織を持っていただろう事も想像できたのだが、どうも手前味噌の話ばかりを見せられると、割り引いて読みたくもなるのだ。

 しかしながら、具体的な体験談の掲載は非常におもしろく、また、日本人としても知っておいたほうがよいと思われるものが列挙されており、その意味で高い評価の書籍につながった。

 第一部第二章の中の、「カッターで敵中脱出の苦心」という項は、戦場を眼前にまざまざと見せつけられるかのような、小気味の良い文体で読ませ、またその内容も過酷で熾烈。是非この事実は知っておくべきだと思った。

 また、第二部第六章もぜひ知っておくべき事実の描写だったと思う。「厨房からの報告」という章で、戦艦での生活にスポットを当てた部分だ。

 ただ戦争をしているという戦艦というイメージしか持っていなかったが、三食睡眠は同じ艦内で行われるわけで、燃料の熱さなどに思いをいたすべきという点に目が開かれた。冷蔵庫がない、つまり保存ができない日清戦争の時代には、肉を摂取するために、豚などを飼育しながら航海していたという。

 歴史の表の部分ばかりではなく、こうした基盤的な部分から時代を想像しなければならないと気付かせてくれた点で、この書籍は良書と感じる。

 上記に示した章を読めば充分だと思うので、いろいろな方に是非目を通していただきたいと感じた。



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わが上司 後藤田正晴―決断するペシミスト
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平時の指揮官有事の指揮官―あなたは部下に見られている
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『昭和天皇とその時代』


昭和天皇とその時代



河原敏明『昭和天皇とその時代』(文春文庫 2003/07)

※河原敏明『天皇裕仁の昭和史』(文芸春秋 1983年)を1986年文庫化にあたり増補。2003年、全面改訂にあたり、増補・改題。

内容紹介:
『天皇裕仁の昭和史』の完全決定版!
現代史最大の主役・昭和天皇の八十七年にわたる日々を知られざるエピソードを交えて辿り、「昭和」という激動の時代を描いた歴史巨篇

読書期間:2005/10/13-10/26
評価:★★★☆☆(3点/5点)


 初出は1983年と古いものの、昭和天皇崩御の後、増補しているということで、新たな研究も踏まえた内容と思って読んでみたのだが、さにあらず。少々残念な内容だった。

 全体的な傾向としては、昭和天皇の人生それぞれの時代が満遍なく描かれている点と、天皇の周囲のエピソードに詳しいという点とが挙げられると思う。

 僕が期待するところとしては、大正の摂政時代からポツダム宣言受諾後の時代の政治的な局面でのエピソードに厚いことや、戦後の戦争責任の解釈について踏み込んでいることだったので、いささか筋違いの期待を寄せてしまったというかたちだ。

 集大成ということで、文字通り浅く広くの内容をまとめたのが本書だろう。昭和天皇初心者にとってはその興味を増幅してくれる一冊には間違いない。特に、その崩御から17年経った今となっては、映像ででもその姿を見たことのない者は多いと思う。かく言う僕だって、その崩御に接したのはまだ小学生か中学生のあたりだ。

 しかし、僕としては前述の通り、期待するものはもう少し深いものだった。しかるに、戦中のエピソードは他の書籍で目にしたことのあるものばかりだったし、皇太后などのエピソードに傾く向きもあり、うんざりする。

 皇太后などのエピソードは、著者自身が別の書籍を発刊しているので、蛇足としか思えない。

 まあ、戦中のエピソードについては数多くの著作が出ているし、新たなエピソードを期待するのは酷だったのかもしれない。しかし、皇室ジャーナリズムを開拓したとプロフィールで謳うならば、戦後の戦争責任解釈について、天皇本人の言を厚くすることはできなかったものかと物足りない。

 海外諸国訪問時の公式発表の言をひっぱって、それを批評するにとどまり、記者としてのスクープはとれていないのである。戦争を「悲しい出来事」と表現するにとどまっていた昭和天皇だが、それについての批判は、僕の幼い頃に各紙で目にしたものである。

 そういう時代もあったなあと懐かしく思うと共に、踏み込んだ新事実がなければ、皇室ジャーナリストの価値を発揮できていないのではないかという印象だ。

 どうもこの著者、天皇ご本人のエピソードよりは皇族、特に女性についてのエピソードに詳しい傾向がある。また、宮内庁などの組織の悪事の暴露においても価値を発揮するようだ。そうすると、僕の求めるものとは合致しないので、どうしても評価は下がってしまうのだった。



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『世間を読み、人間を読む 私の読書術』


世間を読み、人間を読む―私の読書術



阿部謹也『世間を読み、人間を読む 私の読書術』(日経ビジネス人文庫 2001年10月)

※阿部謹也『読書力をつける(「知のノウハウ」シリーズ)』(日本経済新聞社 1997年3月)を文庫化にあたり増補・改題

内容紹介:
「本を読むことは、人を読み、世界を読むこと」「読書は社会の中での自分の位置を知るためのもの」「教養には個人の教養と集団的教養がある」―碩学の歴史家が、自分の生きる世間の構造を解き明かし、自分の中に流れる歴史をつかみ取る「知のノウハウ」の真髄を語る。

読書期間:2005/10/11-10/28
評価:★★☆☆☆(2点/5点)


 阿部先生の出世作『ハーメルンの笛吹き男』を学生時代に初めて読んだときには、それこそ目から鱗が落ちる思いがしたものだった。

 そんな史学の先生の著作が、日経ビジネス人文庫などというところから出版されているのを不思議に思って読んでみた。

 読んでみると、言外に『「世間」とは何か』や『「教養」とは何か』を読みなさいと言われているように感じる。本書は、この二作を平易に書いたものという感じがしたのだ。

 展開される論理も同じものの繰り返しという感じがし、あっちへ脱線しこっちへ脱線しといった印象である。阿部先生の学説を浅く徘徊しているような感じだ。そうなると、阿部先生のこれまでの学説をおおかた把握していれば、大して目新しい感じはしない。

 また、文庫化の増補として加えた文章は、講演の記録であり、本論と別の場面での論になるのだが、講演で話していることが本論と矛盾する部分も出てきており、釈然としない。阿部先生の心底にあるものが共通していることはわかるのだが、字面では正反対なので、読者の誤解を招かないかと心配である。

 総じては高校生や大学一年生向けの書籍といった印象を受けた。

 ビジネスマンにとって有用な論が書かれているかといえば、そうではないのである。ビジネスマンにしてみれば、情報を捉える技術を求めていると思うのだが、もちろん本書ではそうしたものは提供していない。視点や視角を提供しているわけだが、それがビジネスマンにとって直接有用かというと、かなり遠回りをした考え方の提供だという印象である。

 辛口な評価になる結果を生み出したものは、編集者の企画ミスという点につきると思う。

 ビジネスマン向けの書籍として阿部先生を著者に選ぶのがそもそも首をひねる。また、阿部先生が忙しいというので、阿部先生が「語る」のを編集者が文字におこすという作業を選んだらしい。この結果、話にまとまりが出ず、浅い印象を与えてしまった。また、文庫としての増補部分に問題がある点は、前述の通りである。

 そういうわけで、この一冊は読むに値しないと思うのだが、久しぶりに『ハーメルンの笛吹き男』や『「世間」とは何か』を読んでみたいという意欲を与えてくれるという点ではよかったかと思う。



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世間を読み、人間を読む―私の読書術
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『後藤田正晴―異色官僚政治家の軌跡』


後藤田正晴―異色官僚政治家の軌跡



保阪正康『後藤田正晴―異色官僚政治家の軌跡』(文春文庫 1998/01)

内容紹介:
「タカ派の元警察官僚」「カミソリ」と畏怖されながら、自衛隊海外派遣に強く反対。また行財政改革のシンボルとして自民・非自民双方から敬意を一身に集めた後藤田正晴。変貌したのは、彼か、政治か。高等文官試験を一度失敗、初の選挙での落選等、挫折から人間の真実を学びとった気骨ある政治家の全貌を描く。

読書期間:2005/09/23-10/06
評価:★★★☆☆(3点/5点)


 以前から本棚の肥やしになってしまっていた本なのだが、後藤田氏の訃報に接してその存在を思い出し、読んでみることにした。

 保阪正康氏の書籍で、詳細に調査した本だろうと思って読んでみるが、全般的には歯切れの悪い感じ。瀬島龍三氏のルポの際には歯切れよく批判を繰り返し、詳細の行動を追っていたものだが、そこから受けた感じと比較すると、どうもここでは調子が悪い。批判対象でないことがその理由なのだろうか。。。

 情報を収集・解析し、正しい判断を下せば運命は変えられるという点について繰り返し述べられていたが、その具体的体験についてもっとたくさんの事例がほしいと思った。

 後藤田氏のモチベーションについてもいまいち定かでない。なぜ官僚の頂点に立ちたいのかという点が希薄で、いまいち納得できずに読み進めてしまう。

 そういうわけで、つぶさに人生を追ってはいるものの、細かな事例や気持ちへの踏み込みに欠ける感のある一冊であった。

 さりとて、後藤田氏の箴言あふれる人生が勉強になることは確かだ。情報収集と解析、実行のセット。現場を想像することに常に心砕くこと。そして揺るぎない信念。

 上記のようなものを常に意識しながら残した実績というのもすごい。中曽根内閣での業績や、その後の政変で首相になることを嘱望されていたことを僕は知らなかったが、男子事を為すした事例として、非常に感銘を受ける事実だ。

 僕としては、昭和中期の政治史の勉強にも役立つ側面があった。田中角栄氏から始まる自民党内部の抗争は初めて知るものがあった。所詮、歴代の総理大臣の名前、すなわち自民党総裁の名前を順番どおりに暗記しているに過ぎなかったのが、どういった抗争の下に総裁が流れていったのかという点について理解を深められた一冊だった。

 思えば小さい頃は、自民党という一つの党の中に、なぜいくつも派閥があるのか疑問に思ったものだ。同じ志を持つもの同士がなぜ相争うのか疑問に思ったものだった。いまいちど、この構造のおかしさを確認することもできた一冊だった。



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『封神演義』

封神演義〈上〉


封神演義〈中〉


封神演義〈下〉



安能務・翻訳『封神演義』(上・中・下)(講談社文庫 1988/11)
●目次

読書期間:2005/06/02-09/02
評価:★★★☆☆(3点/5点)


 週刊少年ジャンプの連載でアニメ化され、大人気を博した『封神演義』。当時、小説の方を買っていたのだが、読まないでそのままになっていた。ケーブルテレビでアニメが再放送されたのを機に、思い出したようにノロノロと読んでみた。

 なにしろ一冊500ページが三冊に及ぶ大作。そして、どうも性に合わないので、読むスピードも遅くなってしまった。漫画の方はおもしろいのに、小説の翻訳となるとつまらなくなるのは何でだろうと思うと、日本人の感性に合うように描き直している点に原因がありそうだと感じる。



 日本は海外の文化を取り入れて消化する歴史を辿ってきた。古くは中国から儒教を、インドから中国を渡り仏教を、欧米から近代思想を。その思想は日本人に当然のものとして日常に染み付いているのだが、なにせ『封神演義』は道教思想。儒教思想を自分のものとしている日本人にとって、道教の感覚はさっぱりわからないのだ。そこに理解できない原因があるのだろう。

 たとえば仙人が殺戮を犯すことを当然のこととして描いているが、「人間を超越したもの」が殺戮という行為を犯すことは、日本人にとって納得できないものだと思う。「超越者」は、罪を犯さないというのが我々の観念としてあるのではないだろうか。それは、上に立つ者は徳があるという儒教思想でもあるだろう。

 後年、儒教思想により歪められている部分があると翻訳者は指摘するが、ストーリーの根本で道教思想が貫かれているから、納得できようもないのだ。



 『封神演義』の成立を考えてみると、講談という形式で庶民に親しまれ、何百年も語り継がれる中で、儒教思想の世に文章化されたというかたちだと思う。だから、全百回の章立てになっている。

 ということは、一回一回の章が起承転結に貫かれ、最後は「続きはまた次回のお楽しみ」と締められるはずだ。だから、途中で同じようなパターンの話が繰り返される。これが飽き飽きとしてくる。



 西洋の合理思想も染み付いている現代人とすれば、そもそも「封神」という行為の非合理性に首をかしげざるを得ない。敵対する相手に対して、殺されるとわかっている弟子をまずは戦わせて戦死させ、その後に師匠が敵を倒すというパターンが延々と続いたのには閉口した。無駄な戦死者を出すなど、合理的でなくて納得できない。

 戦争の仕方も中国の何時代のものなのか疑問である。武将同士が戦って軍の雌雄が決するというのは、戦争の形式としてどうなのよと思うし、城に免戦牌をかけておけば、攻められないという戦争のルールも疑問だ。本当にこんなやり方があったのか?



 物語構成の欠点としては、キャラクターの使い分けと強さのインフレが挙げられる。

 まずもって主人公の姜子牙(太公望)が弱すぎる。基本的に敵にやられて怪我ばっかりしてるし、軍師として才能があるかといえば、目をむくほど頭が良い戦略は見られない。こんなので、どうやって肩入れしていけるのだろうか。

 姜子牙の周りを固める主だった武将達も、どこの馬の骨かもわからないようなキャラにやられて、簡単に死んでいくというのが納得できない。「封神」に話のつじつまを合わせるためとは言え、無理矢理すぎる。

 また、敵の聞仲が最大の敵かと思っていたら、物語の中盤で戦死してしまうので、肩透かしを食ってしまう。

 また、最大の敵と目されていた人物を物語の中盤で殺してしまったため、後に出てくるキャラの強さがさっぱりわからないのだ。ボスキャラクラスを倒したのだから、もう敵は大したものは残っていないと思わせておいて、そこから味方キャラが続々とやられていくのだから解せない。強さのインフレと言うと少しニュアンスが違ってくるのだけれど、でも、ボスキャラクラスを死なせる順番を守らないと、納得いく物語展開は望めない。



 と、ツラツラと文句を述べてきたけど、作者のいない作品に詮無いことをしている感じでもある。けれど、中国民衆は、この作品をおもしろいと受け容れてきたというのだから解せないのだ。

 逆に、『封神演義』という作品を日本人の観念に合わせて消化しなおした漫画作品(藤崎竜先生)にこそ敬意を払うべきだろう。日本人は小説を読んでいてもしょうがないので、漫画を読むことをおすすめしたい。



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『時代に挑んだ反逆者たち―近代日本をつくった「変革」のエネルギー』


時代に挑んだ反逆者たち―近代日本をつくった「変革」のエネルギー



保阪正康『時代に挑んだ反逆者たち―近代日本をつくった「変革」のエネルギー』(PHP文庫 2003/09)
●目次
[1]石原莞爾の遠い視線
[2]道義を貫いた革命家・宮崎滔天
[3]出口王仁三郎の譲らぬ闘い
[4]田中正造の抵抗精神の核
[5]田代栄助の描いた幻の共和国
[6]西郷隆盛の死生観とその道
[7]知性への過信・佐久間象山
[8]高野長英が抱きつづける時代への怨念
[9]大塩平八郎の義挙とその裏面
[10]大石内蔵助の時間と空間

読書期間:2005/05/25-06/04
評価:★★★☆☆(3点/5点)


 保阪正康氏の著作は、下記のエントリー以来二冊目だ。

駄ブログ:書籍と私(3) 『瀬島龍三 参謀の昭和史』

 瀬島龍三氏をつぶさに追い、関連の人物からの数々のインタビューで、推測を補強する様は信用に足りうるものと感じたものだ。

 だが、今回の著作はいかんせん歴史上の人物をとりあげることになり、推測や主観が強い。十人の人物をとりあげる本作であるが、時代を遡っていく構成になっているため、読みすすめればすすめるほど主観の度は高まる。インタビューもままならず、頼る史料も少なくなるにしたがって、飛躍した推測が強まるのはしかたのないことかもしれない。

 しかし、「反逆」というテーマで統一する筈だった一冊の本が、こじつけに見えたり無理が生じていると感じられたりするのは致命的か。各章のタイトルとその内容に不一致が見られるのもそのあたりが関係するのかもしれない。

 ただ、純粋に楽しめるものではあったし、歴史上の人物の為したことを知るという点ではおもしろい本だったと思う。もちろん全面的に信用して読むわけにはいかないのだけれども。

 特に宮崎滔天、出口王仁三郎、田代栄助といった面々は名前を聞いたことがあるかも。。。というレベルだったので勉強になった。

 ただ、生き方に示唆を求めるなどのビジネス的要素を要求すれば無理が生じる。歴史読本として知識欲を満たすレベルのものだろう。



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駄ブログ:書籍と私(3) 『瀬島龍三 参謀の昭和史』





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保阪 正康
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